OCN Presents MISIA 星空のライヴⅢ Music is a joy forever

今までにいくつもの神話を作り、伝説を生んだ「星空のライヴ」。 2001年10月に初めて行われた河口湖では、一日限りのプレミアム・ライヴで”幻”となり、2003年「II」では、「I」の評判が拡がり、ツアーを組んだにも拘らずチケットは入手困難。ファンの間でいつの日か”伝説のライヴ”となっていった。

Schedule

2006/8/27 山梨 山中湖シアター ひびき
2006/8/26 山梨 山中湖シアター ひびき
2006/8/20 兵庫 播磨中央公園 野外ステージ
2006/8/19 兵庫 播磨中央公園 野外ステージ
2006/8/12 長崎 稲佐山公園 野外ステージ
2006/8/5 北海道 いわみざわ公園野外音楽堂 キタオン
2006/8/1 愛知 名古屋国際会議場 センチュリーホール
2006/7/31 愛知 名古屋国際会議場 センチュリーホール

Live Report

今までにいくつもの神話を作り、伝説を生んだ「星空のライヴ」。
2001年10月に初めて行われた河口湖では、一日限りのプレミアム・ライヴで”幻”となり、2003年「Ⅱ」では、「Ⅰ」の評判が拡がり、ツアーを組んだにも拘らずチケットは入手困難。ファンの間でいつの日か”伝説のライヴ”となっていった。 そして「Ⅲ」では、2006年7月名古屋を皮切りに5都市8公演のスペシャルなツアーとなり、いくつもの”奇跡”と遭遇することになる。
長崎ではアンコールが始まるとステージ上空でいくつもの流れ星が現れ、最終日の山中湖では、霧雨の中で歌うMISIAが照明の光と共に輝いていた。 大自然の中の音楽会は木々の香りや湖のさざ波のかすかな音さえも生バンドの演奏に彩りを加えMISIAの魂の歌声は、森や水面に響きわたり、なんとも幻想的である。
MISIAの歌声をずっと聴いていたい…そんな衝動にかられる。二度と見ることができない”奇跡”…それが「星空のライヴⅢ」である。

LIVE REPORT
星空のダイナミズム
『星空のライヴⅢ』のテーマは“ダイナミズム”だ。  MISIAは日本のライヴシーンのトップをずっと走り続けている。最初の武道館はもちろん、女性ソロ・アーティストとしては至難と思われたアリーナからドームへのクラス・アップを、あっさりとやってのけたのには驚かされた。そうした彼女の輝かしいライヴ・ヒストリーのアナザー・ステップとして位置付けられるのが、『星空のライヴ』なのである。
 『星空のライヴ』は、MISIAの一夜限りのプレミアム・イベントとしてスタートした。会員限定で行われた第一回目は野外の大自然を舞台にしたプライベート・ライヴにふさわしく、ナチュラルなサウンドがテーマに置かれたのだった。その頃のMISIAのライヴの進境は目覚ましく、ヴォーカル・パフォーマンスはもちろん、コンピュータを駆使したサウンド、それと連動したライティングやダンサーなどの演出がアッというまにトップレベルに上り詰めていた。それだけにコンピュータを一切使わない『星空のライヴ』はファンには新鮮に映ったに違いない。大評判となり、その後『星空のライヴⅡ』はツアーとして組まれることになる。
 『Ⅱ』は予想を遥かに越える収穫となった。息の合ったいつものバンドと、目と目を見交わしながらのライヴ。必要最小限の演出が、MISIAのシンガーとしての実力を最大限に発揮させたことが興味深い。主にバラードやミディアム・テンポの曲を中心としたセットリストは、MISIAの歌そのものの感動をダイレクトに伝えてくれた。MISIAが歌い、それに感動したバック・ミュージシャンが自分の心の揺らぎを音で表わす。それを聴いたMISIAが、さらにメロディとリリックに豊かな表情を与えて、彼らに返す。そうしたステージの上の「感動のコミュニケーション」を、オーディエンスはじっくり味わった。どの会場もゆっくりとヒートアップしていき、最終的にMISIAの歌がそれまでになかった熱を帯びることになった。『Ⅱ』は日本のライヴ史上に残る傑作ツアーだったと断言できる。
 そして今回はシリーズ3回目。去る8月12日、ツアー2本目となる長崎・稲佐山でのライヴを観た。  『Ⅱ』とは明らかにテーマが違う。『Ⅱ』が“静”だとしたら、『Ⅲ』は“動”。あらゆる意味でダイナミックに作られている。いきなりアッパー・チューンで始まり、ダンサーも登場する。MISIA自身も座って歌うのではなく、アクティヴに動く。ただしバックはあくまで生演奏のみ。これが何を意味するかといえば、まず第一に“リズム”がコミュニケーションの中心に置かれているということ。『Ⅱ』の時は、剥き出しのメロディとリリックが中心にあった。だが『Ⅲ』ではリズムが主役になっている。元来、MISIAはコンピュータ並みの驚異的な精度のリズム感を持っている。そこから出発して彼女はより次元の高い「人間の揺れるリズム」をもって、オーディエンスと今までとは異なる感動を分かち合いたいと考えているようだ。長崎では特に「TYO」から「めくばせのブルース」に至る流れが圧巻だった。爆発するリズムの中でMISIAのパフォーマンスは飛び抜けて鋭いインスピレーションに溢れ、素晴らしい新境地に達していた。それは本編ラストの「LUV PARADE」でピークを迎え、MISIAの新しいスタンダードの誕生を告げていた。
 一方でリズムに対する挑戦はバラードに対しても行われていた。今回のライヴで新曲が演奏されるのだが、ピアノとヴォーカルの自由なリズムの掛け合いがスリリングで聴き応えがあった。これは『Ⅱ』にはなかったこと。賛否両論があるかもしれない。が、より深い表現に向かおうとするMISIAの真摯な冒険心が伺える。これらの新曲は今後発表になるだろうが、こうしたライヴでの感触がレコーディングに活かされるに違いない。冒頭に書いた「ダイナミズム」とは、単なる盛り上がりという意味ではなく、こうした感情表現の幅の大きさのことを言いたかったのだ。
 オープニング・アクトを務める千織との競演場面では、後輩を力強くリード。チャンスに気持ちがはやりながらも真直ぐな千織の声を含めた、すべての音を聴きながら、デュオのパワーを客席最後方まで届かせようという意気込みが爽快だった。また、たとえば“愛してる”というリリックが以前は中性的に聴こえていたのが、ぐっとフェミニンに響くようになったことに、MISIAの人間としての充実がのぞいていた。
 それにしても今回のチャレンジの難度は高い。盛り上がり切った直後のバラードでのボイス・コントロールや、リズムのズレを楽しむ余裕など、非常に音楽的、かつハイレベルな狙いは、前代未聞。大会場、しかも野外でここまでやるかと思ったものだ。普通なら充分クリアしている出来映えだったが、それでも彼女自身はまだ満足していないのではと思われた。そんなMISIAのトライした「星空のダイナミズム」に呼応するように、長崎でのアンコールではステージ上空に流れ星がいくつも現れるという奇跡が起こったのだった。