Heal The World by Michael Jackson

 このアルバムの中で、一番最初に決まった曲がこの曲でした。この曲は震災後にラジオで最も多くリクエストされた曲の1つだと聞きましたが、たくさんの方々がこの曲をリクエストして一人でも多くの人に届けたいという想いにとても共感しました。私も同じ想いを抱え歌いました。もちろん、傷ついた場所や人を癒そうというメッセージ…環境問題や世界の抱える問題に感心のある人にしか書けないものであろう言葉に深く共鳴したので、歌いたいと思ったんです。

 マイケル・ジャクソンはさらりと歌っているように聴こえますが、なかなか難しい歌です(笑)。とてもゆったりしたリズムの曲ですが…優雅に泳ぐ水鳥の脚のようにとても忙しい部分があるんですね。繰り返し聴くと、この楽曲は歌詞を中心に歌われているんじゃないかと思いました。言葉を柔らかく、とても大切に歌っているんですが、メロディーに素直に乗って歌うと、その肝心な言葉がぷつっと途切れてしまうんです。私自身も歌詞ありきで、そこにメロディーを合わせて楽曲を作ることがありますが、言葉とメロディーをしっかりと融合させるためには、気付かれないような細かな部分でリズムを少しずつ調整しながら歌う必要があります。『Heal The World』もそういうタイプの楽曲だな、と。その細かさに、改めてとても繊細で美しい音楽を創る人なんだなと感じました。こんなにも優しく柔らかな歌なのに、"ただ生きるのではなく、意識を持って生きることを始めよう"とった、強い言葉やシリアスな言葉がズバッと切り込んできりもするので、その歌い方の加減をどうすればいいかはかなり試行錯誤しました。

 そんな大きくて深いメッセージを最大限に伝えるためにも、アレンジはごくシンプルに、というのが最初のイメージでした。ただ、レコーディングスタジオで実際にドラムを叩いてもらったとき、"もっと大きくて柔らかな世界でもいいんじゃないかな"って。そこからオルガンやパーカッション、アコースティックギターなどが入り、JPにコーラスをお願いしたりしました。だって、『Heal The World』って、1人よりもみんなで"Healしよう"って歌う方がより良いメッセージになるだろうなって思ったんです。だからこそ、マイケル・ジャクソンはあんなにたくさんの子供たちのコーラスが必要だったんだろうなって思ったり。作っていくうちに、楽曲が持つメッセージに吸い寄せられるようにアレンジしていった感じがありました。