REPORT

「MISIAがドームでもらったもの」
気温マイナス11度。外の寒さとは打って変わって札幌ドームはスタンド最上段までびっしりのオーディエンスで熱気が充満している。しかも4万人の全員が蛍光ペンライトを手に持っているので、ライトグリーンの光の点が揺れ動いている。ある種、荘厳な眺めだ。その荘厳さは、2003年へのカウント・ダウンに向けられている。もちろん、MISIAと一緒にセレブレイトするために。

広いドーム全体のに光がさざめいている光景に、オーディエンス自身が興奮している。さあ、開演だ。

11月16日、代々木体育館から始まった“THE TOUR OF MISIA 2003 KISS IN THE SKY”は、この日で14本目。いよいよ波に乗ってきたライヴは、オープニングから強力。まずはHIP HOPメドレーだ。プロデューサーSAKOSHINが自ら作ったライヴ用のスペシャル・トラックがドームいっぱいに響く。ドーム・クラスのサウンドとしては最上級。ヘヴィなボトムが会場を揺らす。コンパクトなステージからリズムのエネルギーが溢れ出し、一瞬にしてドームがクラブと化した。

ダンサーの動きの切れが素晴しく良い。MISIAのパフォーマンスもパワフルだ。ヴォーカルに魅力が感じられる。こんなことは珍しい。彼女自身、とても興奮しているようだ。HIP HOPメドレーが終わると、 暗くなった会場に「眠れぬ夜は君のせい」のストリングス・ヴァージョンが流れ、ステージ・セットが動き出す。エアプレインのイメージの巨大な翼が開き始めると、その優雅さとゴージャスさに、会場からタメ息と歓声が上がる。ここからは徹底的にバラードだ。

2曲目、しっとりと歌ってMISIAが話し始めた。

「なんか、すっごいことになってますね。皆さんがライトを持っている事をMISIAは聞かされてなくて、びっくりしました。」

そうなのだ。初のドームということで、張り切ってステージに出た途端、MISIAは信じられないほど美しい光景を目にしてヤラれてしまったのだ。いつも完璧に歌をコントロールする彼女だが、エキサイトしてしまうほどの感動だったのだろう。特別な夜にふさわしい驚きと喜びが、ドームの隅々にまで伝わっている。このバラードのコーナーで今度はこちらが、MISIAが集中して歌った時の恐い程の上手さにヤラれることになる。

途中、MISIAからスペシャルなプレゼントがあった。近々、リリースされるリズメディアトライブのコンピレーション・アルバム「SLOW JAM」に収録する曲を、ここ、札幌ドームでライヴ・レコーディングしようというのだ。曲は、久保田利伸の名曲「Indigo Waltz」。1988年に発表されて久保田の評価を決定づけたアルバム「Such A Fanky Thang!」に収められているバラードだ。MISIA自身の思い入れもあって、心に強く響くテイクとなった。

ラストはロック・テイストも混じえた盛り上がり。ドームのフロアが、実際に揺れていた。「Into the light」で照明がアオると、客席はもう大興奮。

アンコールを待つ間、ドームにビッグ・ウェイブが起こる。コンサドーレ札幌の応援の拍手が上がる。そして現れたMISIAがまとっているのは、ビョークの衣装デザインで注目を集めるマリヤン・ペヨスキーのオリジナル。純白のドレスで「Everything」を歌い、すぐに衣装チェンジして、いよいよカウント・ダウンだ。ステージの背後で花火が上がる。金のテープが打放たれる。いろいろなことがあった2002年に別れをつげて、MISIA もオーディエンスも本当に幸せな表情をしている。

いつもはMISIAが会場中の人にハッピーを振りまいてライヴが終わるのだが、この夜はそれ以上にMISIAがオーディエンスから何かをもらったのでは、という気がした。そして、MISIAはそれを持って2003年にさらに素敵な歌を作り、歌うのだろう。初の武道館も彼女のスケールの大きさに驚いたが、初のドームはその何十倍もの感動があった。

外では、オーディエンスが雪を踏む締まった音が続いている。

文:平山雄一