この秋、話題のテレビドラマ『JIN-仁-』の主題歌「逢いたくていま」は、
番組の大きな牽引力になっている。番組プロデューサーからの依頼は“イメージ・リンク”。主題歌だからといってドラマのストーリーを追うことはなく、おおよその設定だけで“MISIAのバラード”を書いて欲しいというオーダーだった。現代の脳外科医・仁が、江戸時代にタイムスリップする。そこで起こること、思うことを、MISIAの純粋な世界観を通して描いて欲しいというのだ。物語を膨らませるコラボレーションとしては、とてもハイレベルな手法だと言える。もっと言えば、MISIAだからこそ可能なやり方だ。監督や脚本、主演俳優陣などと同列の立場で話題作に参加して欲しいというプロジェクトだった。

「原作のコミックスは読まないでと言われたんですが、そのときはすでに読んだ後でした(笑)。難しいオーダーだったので、すごく悩みました。時空を超えて“逢いたい”っていうテーマを突き詰めていったときに、それは“いつか逢おうね”でもないし、“逢いたかった”でもない。逢いたいっていう気持ちは今現在にしか湧き起こらない感情だって気が付いた。だから舞台は江戸時代でも、今の自分の気持ちと向き合って書こうと思いました」。

さすがにMISIA、明察だ。彼女は今もプロデューサーから今後のストーリーについて何も教えてもらっていないそうだ。が、一方で、プロデューサーは今回のイメージ・リンクが成功したと喜んでいるという。何やら謎めいたあるが「逢いたくていま」というバラードのスケールの大きさと深さを示すエピソードとして、とても興味深い。

さて、ドラマのことはともかく、バラード・イヤーを宣言した今年のMISIAとって、「逢いたくていま」は非常に重要な作品だ。現在、行なわれている“星空のライヴVは前作バラード・シングル「銀河」をテーマに掲げて、これまで行ったことのなかった地域を含めて全国に彼女の歌を直接逢って届けるのがコンセプトだ。MISIAは 「逢いたくていま」に込めた気持ちを、こんなふうに語る。

「人って一瞬一瞬を重ねながら時間を積み上げていく。一緒に思い出を重ねていく。逢えなくなった人とはそれができないからつらいんじゃないかな。普段は一瞬一秒なんて意識しないのに、逢えなくなったときには、一緒に過ごした時間の一瞬一秒さえも全部覚えておきたかったって思うくらいキラキラしたものに感じる。だからこそまた語りあったり、積み重ねあいたいから、逢いたいって思うのかもしれないですね」。

立て続けのバラード・シングルのリリースの中で、MISIAは確実に進化を遂げている。すでにNo.1バラード・シンガーの称号を手に入れながら、さらに高みに進む。

「逢いたくていま」はドラマ主題歌ではあるが、彼女がツアーに出る理由も歌っている。「私の歌を聴いてくれる人たちに、もっともっと逢いたい。お互いに伝え合いたいことがあるのかなって思うんです」。

CDリリースとツアーがMISIAというアーティストの両輪であるなら、このシングルはその両方を満たす傑作であるに違いない。